会計史
「会計学名著紹介」シリーズ、今回のテーマは、正確には、名著ではなく、「企業会計原則」です。「企業会計原則」は、日本の企業会計の近代化に貢献しただけでなく、会計教育にも多大な影響を与えてきました。以前の財務会計の教科書は、その多くを「企業会…
まず、本稿の(その1)で紹介した全体のスケジュールのうち、スマトラ島でのスケジュールを以下に再掲する。 8月24日 スマトラ島メダン(インドネシア、以下同様) 8月25日 パンカランブランダン油田、バンカランスス油田 8月26日 タバコ工場視察 8月27日 …
南方視察団一行は、1942年7月25日午前6時50分頃、羽田空港を飛び立ち、まず、当時、日本最大の民間飛行場であった福岡県の雁の巣飛行場に着陸した。午前11時に離陸して、現在の中国上海大場飛行場に2時45分に到着。午後3字15分に再び離陸、午後6時半に台北飛…
1942年7月下旬から10月の約3か月間、当時、日本の占領下にあった南方に日本と同様の統一原価計算制度を確立するために、現地において原価計算に関する指導と業種別の原価計算準則の作成が陸軍省より4人の会計学者に委嘱された。委嘱されたのは、長谷川安兵衛…
「企業会計原則」は、日本が主権を失っていた戦後占領期という特殊な状況で生まれた。幸いなことに「企業会計原則」の成立については、「企業会計原則」の成立プロセスに関わる黒澤清(当時横浜経済専門学校、後の横浜国立大学教授)の個人所蔵の内部資料を…
「企業会計原則」は、1949年(昭和24年)7月に公表され、日本の会計制度の近代化の中心となった(以下では昭和24年版「企業会計原則」と呼ぶ)。個人的なことであるが、筆者が財務会計に接したのは1976年(昭和51年)であった。筆者が学生時代の財務会計の教科書に…
日本型会計制度の歴史(日本固有の問題)①:「未払込株金」の表示問題 今回は,「「未払込株金」の表示問題を取り上げます。 「未払込株金」の表示問題 日本の会計制度近代化における問題点を象徴しているのが、「未払込株金」の表示問題です。「標準貸借対照…
日本型会計制度の歴史(「企業会計原則」):⑤安本「財務諸表準則」と証券委員会規則第18号「財務諸表規則」 今回は,安本「財務諸表準則」と証券委員会規則第18号「財務諸表規則」を取り上げます。 安本「財務諸表準則」と証券委員会規則第18号「財務諸表規…
日本型会計制度の歴史(「企業会計原則」)④:シャウプ勧告と「財務諸表規則」 今回は,「シャウプ勧告と『財務諸表規則』」を取り上げます。 シャウプ勧告と「財務諸表規則」 1947年(昭和22年)3月28日に「証券取引法」が公布されましたが、証券取引委員会に…
日本型会計制度の歴史(「企業会計原則」)第3回 「企業会計原則」の誕生 今回は,「企業会計原則」の誕生を取り上げます。なお,引用の一部については,表記を改めています。 1949年(昭和24年)7月9日、「企業会計制度対策調査会」は、黒澤第1部会長の草…
日本型会計制度の歴史(「企業会計原則」)第2回幻の「企業会計基準法」構想 今回は,幻の「企業会計基準法」構想と「企業会計制度対策調査会」を取り上げます。なお,引用の一部については,表記を改めています。 ①幻の「企業会計基準法」構想 「工業会社及…
日本型会計制度の歴史(「企業会計原則」)第1回 「企業会計原則」の誕生前史 今回は,「企業会計原則」の誕生前史として,「工業会社及ビ商事会社ノ財務諸表作成ニ関スル指示書」およびその改訂を取り上げます。なお,引用の一部については,表記を改めてい…
戦前編第3回 企画院「製造工業財務諸準則草案」 今回は,「会社経理統制令」と 企画院「製造工業財務諸準則草案」を取り上げます。なお,引用の一部については,表記を改めています。 ①「会社経理統制令」と 企画院「製造工業財務諸準則草案」 陸軍は,1939年1…
戦前編第2回 「財務諸表準則」、「財産評価準則」、「製造原価計算準則」および「会計監査準則草案」 今回は,「日本型」会計制度の出発点である財務管理委員会による準則の確定稿と「会計監査準則草案」を取り上げます。なお,引用の一部については,表記を…
戦前編第1回 商工省「財務諸表準則」未定稿 商工省「財務諸表準則」未定稿 初回は,「日本型」会計制度の出発点である財務管理委員会による準則の未定稿を取り上げます。なお,引用の一部については,表記を改めています。 商工省「財務諸表準則」は,産業合…
はじめに 昭和という時代は,日本の会計近代化にとって重要な時代でした。日本における会計・監査規制の近代化は,商工省臨時産業合理局財務管理委員会による「標準貸借対照表」(以下では、商工省「標準貸借対照表」と略します)として1930年(昭和5年)から始…